643 名前:おさかなくわえた名無しさん

15年ぐらい前。学生で独り暮らしだった頃の話。

アパートの留守電に間違い電話が時々録音されるようになった。
内容は気持ち悪くて、老婆の声で
「お前が年金を全部持って行ってしまったから生活が困窮している、
お願いだからお金を返して欲しい」ということを、
泣きながらずっとずっと、テープが終わるまで言い続けている。

その留守電が入っているのはたいてい週末の朝方で、
タイミング的に友人と朝まで楽しく飲んで
良い気分で帰ったところで独りでこの留守電を聞くハメになり、
一気に酔いが醒めて鬱な気分に。

その電話は毎週来るわけでもなくて、忘れた頃にまた録音されている感じで、
そうやって何度も聞いているうちに
その老婆の息子(孫?)に対しての憤りといい加減に間違い電話止めてくれ!
という思いでいろいろ悩んでしまい、
両親や友人、あげくは地元の警察にまで相談した。

そんな感じで忘れた頃にやって来るその留守電に悩まされていたが、
ある日、やっとその留守電が録音されている現場に遭遇することが出来た。
受話器を上げて、これは間違い電話で俺は違う人であること、
その息子に金を渡しちゃダメだ、ということをまくし立てようとしたんだが、
俺が少し喋ると突然正気に戻ったように、「ゴメンね、間違えたみたい」と別人のように。
たぶんだけど、痴呆症の老人だったんだと思う。
いろいろ悩んでいたがそんなことは考えもしなかったのですごく衝撃的だった。