69 :あなたのうしろに名無しさんが

高校の時、中学の頃のクラスメイトがバイクで死んだ。
暴走してて、カーブを曲がり切れなかったって聞いたけど、
にわかに信じられないくらい、おとなしくていいやつだった。

その時期、自分は色んな事が重なってすごく落ち込み易くなってて、
漠然といつも死にたいと思ってたから、そいつの葬式の時も悲しいよりも、
そんないいやつが死ぬ世の中に対して嫌な気持ちでいっぱいだった。
で、「自分が死んだらこういう風にみんな泣くんだろうか」とか
「もし自分の葬式だったら」とかぼーっと考えてたわけよ。

で、葬式の最後にクラスメイトが一人ずつ御両親に会釈して帰ってたんだけど、
自分の番が来て会釈した瞬間、

「あなたが死ねばよかったんじゃないの?」

と故人の母親がぼそりとつぶやいた。
びっくりするよりもゾクっと寒気がして、顔を上げると、
周りの人間が驚いた顔をしてて、
言った本人も何故そんな事を口にしたのかわからないといった顔をしてた。
その後何回も謝られて、自分は真っ青になって家に帰った。

あれはいったいなんだったんだろう?今でもわからない。
おばさんに自分の考えが伝わってた?
それとも自分の考えを読んだなにものかが、
生きてる人間の口を借りたんだろうか?
まさか死んだ友人が・・・とちらっと浮かんだけど、
あんないいやつがそんな事を言うとは思えない。いや、思いたくない。